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【文献紹介】カルシウムサプリメントは心臓発作のリスクを高める
カルシウムのサプリメント常用者は、心臓発作のリスクが大幅に高まることが、スイス、チューリヒ大学の研究チームが「心臓」に発表しました。
加えて、カルシウム以外のミネラルやビタミンの入ったサプリメントと併用するよりもカルシウム単独の場合、さらに危険性が高まることも分かりました。
今までの疫学研究などから、カルシウムの摂取量が多い人は心臓病や脳卒中の危険因子とされる高血圧や肥満、2型糖尿病のリスクが低いとされていました。しかし、今回の研究によると、ただカルシウムを多くとればいいわけではなく、「何からカルシウムを摂ったか」が重要であることが分かりました。
研究では、ドイツ・ハイデルベルグにおいて、35-64歳の約2万4千人を対象に1990年代中ごろから追跡調査を行いました。研究開始時に12ヶ月の食事摂取頻度調査とビタミンやミネラルのサプリメントの摂取習慣について調査が行われました。
調査開始から約11年の間に、心臓発作が354件、脳卒中が267件、これらに関係する死亡が267件ありました。
対象者のカルシウムの総摂取量(食事由来とサプリメント由来を含む)により4群に分けて分析したところ、中等度の群(820mg/日)は最も摂取量の少ない群に比べ心臓発作リスクが31%低いことが分かりました。しかし1100mg/日以上の群では、リスクに差が認められませんでした。脳卒中のリスクは、カルシウム摂取量との間に関係が見られませんでした。
一方、ビタミンやミネラルのサプリメントを摂っていた人に着目すると、サプリメント由来のカルシウムを摂取していた人は、一切サプリメントを摂らない人に比べ心臓発作の発症率が86%も上昇していました。またこのリスクは、カルシウムサプリメントだけを摂取していた場合にさらに高まっていました。
研究者らは、この理由について、サプリメント由来のカルシウムは血中カルシウム濃度を急激に上昇させるためではないかと考えています。また、カルシウムサプリメントが、閉経後女性の骨粗鬆症対策のために安易に使われているが注意が必要であると述べています。
【文献】
Li. K. et al.: Associations of dietary calcium intake and calcium supplementation with myocardial infarction and stroke risk and overall cardiovascular mortality in the Heidelberg cohort of the European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition study (EPIC-Heidelberg). Heart, 98: 920-925. (2012)