役割の終わった緑のカーテンです。秋の空のもと次の世代をつなぐ種ができています。半袖が長袖か悩む季節です。
10月15日(土曜日)に青森県弘前市で開催される「国際りんごフォーラムin 弘前」で講演します。講演テーマは下記です。一般の方も入場可能なのでよろしかったらおいでください。
【演題】
リンゴの消費拡大で日本人の健康寿命向上
- 21世紀のパラダイムシフト -
会場:弘前大学50周年記念会館・みちのくホール
時間:2011年10月15日土曜日10:50~11:30
【講演要旨】
日本人の平均生命寿命は男79.59才、女86.44才です(2009年)。「人生百年」といえる時代が近づいてきています。一方で生活習慣病を原因とした寝たきりや介護などが問題となっていおり、「いくら生命寿命が延びても..」と思っている人もいます。
世界保健機関(WHO)は、生命寿命とは別に健康体でいられる期間を示す健康寿命について調査しています。生命寿命と健康寿命を比較すると男性で約6年、女性で約8年の開きがあることが分かりました。そのため、生命寿命と健康寿命の差を縮めることが望まれています。「死ぬまで元気で生きる」ためには、生活習慣病の予防が大切です。
医科学の進歩は一定方向に一歩ずつ前進する場合だけでなく、見方やとらえ方が180度転換する場合があります。こうした変革をパラダイムシフト(コペルニクス的転回)といいますが、果物と健康にかかわる見方やとらえ方も同様の変革であると称されています。
20世紀後半からの医科学研究の進歩により、ガン、心臓病、脳卒中、2型糖尿病などの生活習慣病は、食生活などを改善すれば疾病の発症を避けられるか、発症を遅らせることができることが分かりました。例えば、1982年に行われた疫学調査の結果からガン予防には果物と野菜の摂取が必要であることが示されました。
そこで、アメリカではガン予防を目標に、1991年から食生活改善のための「5 A DAY(リンゴなど果物と野菜を毎日5サービング摂取)」運動が始まりました。この運動は大きな成果を収め、ガンによる死亡率、罹患率ともに減らすことに成功しました。
リンゴなど果物に含まれている果糖など甘い糖類に対する百年以上続いていた有害説の誤解は、1986年に解けました。米国食品医薬品局(FDA)は、ショ糖、果糖、ブドウ糖と健康に関係する千以上の論文を再評価した結果、果物などから供給される糖類は、一般にいわれている疾病(肥満、糖尿病、心臓病、高血圧など)について、こうした糖が直接的な原因であるという明確な証拠はないと結論づけました。著者らもヒト介入試験でリンゴ摂取により血液中の中性脂肪が減少することを明らかにしています。
「リンゴはカロリーが高いので肥満の原因」などと誤解されていますが、リンゴなど果物のカロリーは野菜と同等か、それよりも低いのです。例えば、リンゴ100gは54kcalですが、野菜の煮しめ70gは134kcalです。
さらに、大規模なヒト介入試験から開発された食事摂取法(DASH食)では、毎日果物を320kcal~400kcal(リンゴなら毎日4個位)の摂取を推奨しています。
こうした医科学研究の成果を基礎に、著者は果物を毎日200グラム以上(リンゴなら1個以上)摂取することが必要であると提唱しました(2000年)。
こうした結果を受けて2005年には厚生労働省と農林水産省が共同して食事バランスガイドを作成し、栄養学史上初めてリンゴなど果物の摂取目標を定めました。従って、来るべき日本の社会に備えてリンゴの消費を拡大し生活習慣病を予防することが期待されています。
詳しい案内は下記のサイトにあります。