2011年4月6日水曜日

桃の花


















桃の花が咲いています。花言葉は「チャーミング」だそうです。


春の苑紅(くれない)匂ふ桃の花
    下照る道にいで立つ少女(をとめ)
                - 大伴家持


単行本「見直そう! くだもののちから」がいよいよ最終コーナーを回りました。ゴールに向かってがんばっています。

どうやっているかというと、原稿をコンピュータに読んでもらっています。フリーソフトを使ったこの方法が意外と効果的です。

単行本の「はじめに」の部分を先行公開します。


はじめに(β版)

果物は、食べると太ると思われています。ところが、医科学的証拠から果物のカロリーは野菜と同等か、それよりも低いことが明らかとなりました。

果物にはたくさんの誤解があります。
20世紀の栄養指導では、「果物は食べても食
べなくても良い嗜好品」とされていました。例えば、糖尿病患者に対しては、「食べない方がよいが、食べるなら菓子に代えて少しだけ」との栄養指導が行われていたこともありました。こうした果物に対する見方やとらえ方が変わったのは、ヒトを対象とした医科学研究の進歩によります。

医科学の進歩は一定方向に一歩ずつ前進する場合だけでなく、見方やとらえ方が180度転換する場合があります。こうした変革をコペルニクス的転回といいますが、果物と健康にかかわる見方やとらえ方も大きく変わりました。

果物に含まれているブドウ糖、果糖、ショ糖に対する100年以上続いていた有害説の誤解が、1986年に解けました。その後の研究から、果物は生活習慣病を予防して人の健康の維持・増進に必須の食材であることが明らかとなりました。「果物に含まれている果糖は血糖値を上げるので糖尿病に悪い」「果物を摂取すると中性脂肪が増える」「果物は肥満の原因」などは誤解であることも分かりました。

生活習慣病予防の概念も大きく転換しています。ガン、心臓病、脳卒中、2型糖尿病などの生活習慣病は、食生活などを改善すれば疾病の発症を避けられるか、発症を遅らせることができます。アメリカでガン予防を目標に、1991年から始まった食生活改善のための「5 A DAY(果物と野菜を毎日5サービング摂取)」運動は大きな成果を収め、ガンによる死亡率、罹患率ともに減らすことに成功しました。

こうした医科学研究の成果を基礎にした21世紀の栄養指導では、生活習慣病を予防し健康の維持・増進のためには、果物の摂取が必須と位置づけられました。大規模なヒト介入試験から開発された食事摂取法(DASH食)では、毎日果物を5サービング(握りこぶし5個分)、食事バランスガイドでは毎日200グラムの摂取を推奨しています。

ところが、厚生労働省の国民健康栄養調査によると、どの世代も果物の摂取量が不足しています。特に、20~30歳代の摂取不足が顕著です。

そこで、果物の摂取を増やすための一助となるように、果物に対する誤解や健康機能についてわかりやすく解説する記事を月刊誌『果実日本』に掲載してきました。本書は『果実日本』の連載記事「実践!くだもの健康学」に加筆するとともに、数字を最新版に改めました。

本書の編集と作成にあたって、終始ご尽力をいただいた日本園芸農業協同組合連合会の丸岡秀一氏、伊藤史朗氏、増野千春氏に深い謝意を表します。特に、丸岡秀一氏の節目節目のアドバイスや激励なしには完成しませんでした。

平成23年

田中 敬一

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